“私が仕事で『みど*リンク』アクションに係るようになってから2年半が経過しました。『みど*リンク』の諸活動を通じて触れる緑は自分の中では単なる「緑」にとどまらず関係者の皆さんの想いや愛情がこもった「みどり」へと変容しているように感じられます。”
10月中旬にアップした事務局通信「『みどり』の効能」の中でこう書きました。
これに呼応するように私自身の生活領域における「みどり」のウェイトもかなり変化してきました。学生時代に建築学を専攻していた私にとって、都市・街区・建物といったハードと切り離せない関係にあるさまざまなランドスケープは、長く、そして今も変わらず興味を抱く対象なのですが、ここ1、2年の「みどり」や「花」との関わりを通じて改めてそれらがなす単なるビジュアル面にとどまらない役割や作用の大きさを実感しています。
生活のかたわらに「みどり」や「花」が存在することで、何気ない日常に「潤い」や「いろどり」が生まれます。
その結果、「深い印象」、「アメニティー」、「ヒーリング」や「リラクセーション」といったものが得られ、そして「コミュニケーション」も深まるように感じています。
例えば、私は趣味のサイクリングを通じていろいろな街を訪れるのですが、「みどり」や「花」が織りなす予期せぬ風景に心を奪われることは大きな楽しみのひとつです。
また、私はかれこれ2年間ほど小さな市民農園で野菜を作っているのですが、そこでも興味深い作用が確認できました。具体的には次のようなことです。
私が農園での作業を始めた際、幼稚園児だった娘が思いのほか農作業や野菜に関心を持ちました。そこで私はできる限り彼女と一緒に畑に出掛けるようにしました。
トマト、ナス、キュウリや豆の莢(サヤ)といった果菜類、ダイコンやニンジンといった根菜類の可食部分は「スーパー」や「食卓」でよく目にしますが、都市で暮らすこどもが、店頭に並ぶ前に落とされてしまう葉や茎、成長過程でしか目にすることができない花に詳しくなるチャンスはそう簡単に得られません。でも、農園で野菜を育てているとそうした機会が極めて身近なものとなります。
そして「キュウリの花には2種類ある。花には蜂や蝶がやってくる。虫は受粉に役立つ!」「実が1晩で倍くらい成長する。」なんていうことを目の当たりにするわけです。すると、こどもというのは面白いもので、興味を持ったモノやコトは苦もなく知識化するんですね。
畑に出るようになった彼女は、自分で収穫したキュウリを美味しく味わうばかりでなく、本葉の形や草丈といった成長の過程、昆虫には益虫と害虫がいることや益虫が果たす役割などについて熱心にノートに書き留めてみたり、目を輝かせながら疑問点を私に尋ねてくるようになりました。
そして今では、葉を見ただけで小松菜、ルッコラ、水菜、ノラボウ菜、ほうれん草、春菊の区別がつくようになり、葉に食害を与える蛾の幼虫の名前まで覚えてしまいました。
今年は春から秋にかけての作業を通じて「落花生の花は黄色くて蘭のような形をしている」「落花生の莢は地上にできるのでもジャガイモのように根につくのでもなく茎の節目からヒョロっと伸びてきた弦みたいもの(子房柄)が土中に潜り込んでいったその先端にできる」ということを学びました。
落花生の花や子房柄が父娘間の共通話題となり会話も増えたことは言うまでもありません。
「どうやら自分達の手でつくる野菜は買ってくる野菜とはひと味もふた味も違って都市生活者の暮らしをリデザインするきっかけにすらなり得る。」…父親の私はそう学んだ次第。
農作業のない日常に後戻りするのはもはや難しそうです。
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