『みど*リンク』アクション

東急田園都市線たまプラーザ駅からユリノキの並木道を進んでいくと、「美しが丘中部自治会館」の交差点があります。日差しが春めく3月10日、この交差点脇で『みど*リンク』アクションの認定証授与式が行われました。今回の支援グループは「美しが丘中部自治会アセス委員会遊歩道ワーキンググループ」の「100段階段プロジェクト」です。

『みど*リンク』アクション認定証の授与式

プロジェクトのメンバーと、認定証を持つ代表の藤井本子さん(左)

「100段階段」とは、この交差点近くにある太鼓橋(歩道橋)から横浜市立美しが丘小学校へ続く階段道の愛称です。太鼓橋につながる遊歩道まで含めると、この地域の一番高いところと低いところを最短距離で体感できる標高差がある「100段階段」をランドマークとして、周辺も含めて階段や遊歩道の整備・修景活動(都市計画や道路計画などで景色を壊さず町並みなどを整備すること)が行われています。

「美しが丘中部自治会」は1972年に全国初と言われる住民発意による建築協定を発足した団体であり、時代に応じて住民が主体となって住環境を守ってきた歴史があります。2016年に発足した100段階段プロジェクトは、同自治会のメンバーに加え、「田園都市建築家の会」やアートプロジェクト「AOBA+ART」から若い力が参加。ヨコハマ市民まち普請にエントリーし、まち歩きや、100段階段に色を塗るワークショップなどを通じて、子供からお年寄りまで、誰もがそれぞれに楽しみながらまちづくりに参加する機会をつくっています。

100段階段

オリジナルの缶バッジ

今回の『みど*リンク』アクションでは、100段階段プロジェクトのもうひとつの取り組み“たまプラ遺産”に認定されている2つの場所に、位置情報プレートとスツールを設置しました。

交差点脇に設置したスツールとプレート。ここが100段階段の18段目と同じ標高51メートルであることが記されています

位置情報プレートには緯度・経度とともに標高が記され、100段階段の何段目と同じ標高かも分かり、実際に100段階段側にも、同じ標高の段に“たまプラ遺産”のプレートが設置されています。100段階段はこのまちの「標高スケール(定規)」という新たな機能を持ち、まちに張り巡らされた遊歩道をつないでいるのです。

表彰式の後に訪れたもう一つの設置場所、三角形の小さな空き地では、ちょうどお散歩中の園児が休憩していました。スツールができたことで、コンクリートの空き地が、会話の生まれるあたたかみのある空間に変わりました。ここで休憩できることで、歩く距離が伸びる人もいるかもしれません。

住宅地を通る遊歩道。三角形の小さな空き地にもスツールとプレート設置

空き地は標高61メートル。交差点とは10メートル・55段分の標高差があります

藤井さんが大切にしている、2008年につくられた遊歩道の要修景個所を示したマップ

現在はコロナ禍で活動が制限されていますが、みんなでちょっと集まり、オープンエアで定例会をやってしまうのもこのプロジェクトの特徴。また新しい切り口のワークショップが始まりそうです。

美しが丘には歩車分離式の遊歩道が約3,300メートルにわたって張り巡らされています

オープンエアの定例会

美しが丘中部自治会アセス委員会遊歩道ワーキンググループ 100段階段プロジェクト代表 藤井本子さんのコメント

今回スツールを設置した場所は、実は自治会の先輩方が10年以上前に考えてくださっていた「まちかどポケットパーク」を実現したものです。先輩方は高齢化やつながりの希薄化を見据えて、人と人が自然に出会ったり、ちょっと憩えたりする場を遊歩道につくりたいと考え、調査・検討されていました。先輩方が活用できる、あるいは改修が必要、と考えていらっしゃった場所がまだまだあります。

今回、タイルとともに設置されたスツールは、100段階段の2台、富士見ポイントの1台に次いで、全部で7台に増えました。この100段階段プロジェクトは、ヨコハマまち普請事業にエントリーして始まりましたが、まち普請は単年度の助成。寄付のお願いや100段階段の協賛企画なども行っていますが、まだまだ足りません。今回『みど*リンク』アクションにご支援いただいたことで“たまプラ遺産”を新たに加えることができて大変ありがたく思っています。歴史や自然、文化、運動など、さまざまな観点から人々のまちとの関わりをつくり、地域資産である遊歩道の修景活動につなげていきたいですね。