『みど*リンク』アクション

小雪(しょうせつ)に入り朝晩の冷え込みが厳しくなってきた2023年11月25日、東急池上線石川台駅からほど近い「一の橋児童遊園」で『みど*リンク』アクションが開催されました。今回の支援グループは、東京都大田区が推進する地域で公園を守るボランティア活動「ふれあいパーク活動」の登録団体「途草会」(みちくさかい)です。

子育て世代と近隣の保育園に勤める方が中心となって、子どもたちが安心して気持ちよく児童遊園を利用できるようにと、施設の点検や花壇づくりを2022年度から行っています。

一の橋児童遊園は、商店街と並走する「呑川」(のみがわ)の真上にあり、北と南が川の側道に挟まれています。228平方メートルと小さいながらも、近隣の保育園の遊び場として、また散歩やジョギングをする方の休憩地点として、地域内外の方々に利用されています。

この日の途草会の活動は、植え込みの剪定と花壇づくり、安全対策です。『みど*リンク』アクション認定証の授与式と記念撮影を終える頃には、保育園の先生と園児もやってきました。

認定証の授与式。右から2番目が代表の田村将理さん

まずは児童遊園をぐるりと取り囲む花壇の手入れです。途草会のメインの活動は、「ひこばえ」と呼ばれる切り株や根元に生える若芽を取り除く作業とのこと。これは、ごみの放棄を減らしたり、外からの見通しをよくしたりすることにつながっています。

植木の足元をすっきりさせて見通しをよく

作業をしていると、この地域の自治会長さんが声をかけてくださいました。「こうやって植栽の足元をきれいにしてもらうと、車を運転しているときの見通しがよくなって助かるんです」。確かに公園を囲む4本の道は、人通りだけでなく自転車や車の通りも多そうです。

田村さんも「周辺には保育園が6つありますが、園庭がないので公園へ遊びに行くんです。人工芝を敷いているこの児童遊園は特に利用されていて、平日は入れ代わり立ち代わり100人くらいが利用しています」と言います。ふれあいパーク活動を始めるにあたっては、事前に近隣の保育園にヒヤリングし、どう管理していけばいいか話し合うことから始めたそうです。

次は花苗を植えていきます。近所のお店からいただいた木箱を再利用した柵を地面に差し込んでいると、男の子が「やりたい」と名のりを上げました。この花壇の花は彼の保育園で植えたのだそうです。

近所のお店からいただいた木箱をプランターに活用

呑川の真上にあり、花壇の向こうは橋!

さらに、側道に面した植栽のないスペースを新たに花壇にすることになりました。植えるのはヒメツルソバです。各自が植えたい場所を決めて土を掘っていきます。お父さんと一緒に花を植えている女の子もいました。

子どもたちがクワやスコップで土を掘り起こし

「わたしはここに植える!」

「大きくなあれ」

最後は、安全対策です。田村さんはレンガ用のヤスリを取り出し、花壇を囲むレンガの角を削り始めました。「レンガの角でケガをした子がいたので、区に許可を取って削ることにしました。とても時間がかかるのでちょっとずつですが。私たちの活動はこういう“2ミリ削る”といったスケールの小さい活動なんです」と田村さんは笑います。

レンガ用のヤスリで角を削ります

何日もかけて角を削ったレンガ。奥のレンガと比べると違いが分かります

安全対策にはもう一つあり、それは植木から飛び出している小枝の剪定です。植木の剪定は大田区から委託された会社が行っていますが、切り口が尖っている小枝に気づいたら剪定ばさみで切っているそうです。その技術は途草会のメンバーでもある庭師さんから教わったもので、道具の選び方や使い方だけではなく安全性も考慮し、その場に合わせた方法を教えてもらっているそう。「植物の知識はまったくなかったんですが、途草会に入ってどんどん興味が出て、日頃から情報を集めるようになりました」とメンバーの矢島さん。

途草会はメンバー全員が定期的に集まって一斉作業をすることはなく、各自のライフスタイルや児童遊園の状況に合わせて作業しています。田村さんがよく作業する早朝は、散歩をしている人からよく声をかけられるそう。「この花は誰々が昔植えたんだ、とかいろいろ教えてくださるんです。あるときは、最初は子どもが来てうるさいと言っていた方が、話しているうちに、これからもここで遊んでほしい、と言ってくださったこともありました」。

通りすがりのご近所さんとしばし談笑

上は東急池上線。車窓からも花を楽しんでもらえるといいな

また、保育園の園児が遊びに来ている平日の昼間にクワで土を掘っていると「一緒にやらせて」と園児が手伝ってくれることもあるそうです。前述のレンガの角を削る作業も同様で、その際は「転ばないように気をつけてね」という注意喚起につなげているそう。見通しの良い児童遊園での不定期な活動が、世代を超えた交流を生んだり、子供の遊び場をみんなで考えたりするキッカケにもなっているんですね。

 

「途草会」代表 田村将理さんのコメント

大田区の「ふれあいパーク活動」を2022年度から始めて、最初の一年間は、一の橋児童遊園の見通しの改善や、レンガによる子供のケガを回避する策を区と話し合うなど、課題を解決するための取り組みで手一杯でした。花壇の手入れは今年度に入ってようやく始められた活動です。『みど*リンク』からのご支援で私たちの活動の幅も広がり、モルックを購入させていただき、「公園で子どもと学ぶモルック」というイベントを開催します。

私はこの町に住んで12年になりますが、まちと直接と関わるようになったのは一の橋児童遊園の管理を始めてからで、この活動がきっかけをくれました。自分たちが使っている公園なので、自分たちで手を入れられないのは寂しいと思っていました。でもだからといってみんなが好き放題やっていいわけではありません。何かやろうとすると必ず何らかのルールとの調整も必要になります。そういった際に、途草会が行政と市民の間でそれぞれの立場を理解して解決策を探っていけたら。子どもたちにも、この児童遊園との関わりを通して自分の住んでいるまちに自分で手を入れられるんだ、ということを体験して欲しいと思っています。そのためにも、日々の暮らしの中でメンバーのそれぞれのネットワークを生かしながら、このまちらしい児童遊園にしていきたいですね。