2015年4月18日、慶應義塾大学日吉キャンパス協生館内にある「藤原洋記念ホール」において、『みど*リンク』アクションの支援グループが集結し、第3回『みど*リンク』カンファレンスが開催されました。
当日は、2014年度支援グループによる活動報告に続いて、多方面で活躍される慶應義塾大学名誉教授(生物学)の岸由二先生に、「足もとからみんなですすめる地球人のまちづくり」をテーマにご講演いただきました。
講演終了後、各支援グループ代表者の投票により、2014年度『みど*リンク』アワードと準アワードが決定。アワードは、生徒たちの自主性向上、環境循環の仕組み、地域コミュニティの活性化に取り組む「東京都立田園調布特別支援学校」が受賞。準アワードには、慶應義塾大学・日吉キャンパスのまむし谷における雑木林や水辺の再生に取り組む「慶應義塾大学・日吉丸の会」が選ばれました。
このほかにも、東急カード㈱より「乗ってタッチ みど*リンク」の取り組みや、環境省からご紹介いただいた、日本の里山再生事業についてのプレゼンなど、充実したイベントとなりました。カンファレンス終了後には、懇親会も開催され、参加者同士が交流を深める貴重な機会となりました。
【開催日時】2015年4月18日(土)13:00~18:30
【会 場】慶應義塾大学 日吉キャンパス 協生館 藤原洋記念ホール
13:00
東急電鉄 都市創造本部 開発事業部 事業計画部 東浦統括部長による挨拶で、『みど*リンク』カンファレンスが開会となりました。
開会のあいさつ
13:05
2014年度に支援した16グループが、1グループ5分間の持ち時間で活動内容を報告しました。発表のあと、最も優れた活動だと思われるグループに各グループの代表が投票し、『みど*リンク』アワードと準アワードを各1グループ決定しました。(投票は自グループを除く)
mackerel(マカレル)「インタラクティブな みどりマップ」
街中を歩きながら”みどり”をweb上でつぶやくことで、街の多様な緑を発見することができました。つぶやかれた緑の情報がマッピングされた「みどりのマップ」を公開しました。
宮前ガーデニング倶楽部宮崎台地区「宮崎台駅前花壇の改修整備」
花壇の前にフードコートができたので、関心を寄せる目が増して、励ましの声や花に関しての質問もいただき、コミュニティの輪が広がりました。
中原区市民健康の森を育てる会「地域で育てる中原区市民健康の森」
充電式草刈り機の支援により、作業負担が軽減されました。『みど*リンク』アクション認定証授与式ではゲンジボタルの飛放式を行い、大勢の方々にホタル観賞を楽しんでいただきました。
慶應義塾大学・日吉丸の会「まむし谷と松の川のみどりをつなぐ次世代まちづくり」
日吉駅の西側にある松の川緑道で活動をしている緑を守るグループと連携するきっかけになり、一緒に活動することで、よりたくさんの人に日吉の自然を知ってもらうことができました。
NPOまちづくり大井 大井町駅前中央通り改善推進チーム「大井町駅前中央通りをコミュニティの場にする活動」
大井町駅前中央通りに人が集まるコミュニティの場、ストリートファニチャー「憩いのスポット」を作り、「品川区立山中小学校」の子どもたちが植物を植えてくれたプランターを年に2回入れ替えを行いました。
NPO日本タウン&カントリー交流推進センター「中目黒駅前広場の花いっぱい活動」
花壇づくりのプロセスをとおし、保育園の子どもたちが、日常的に花や土に触れる貴重な自然体験をすることができました。
北商自治会 花とみどりの会「大岡山 花で笑顔のまちづくり」
次世代を担う地域の子供たちが、自由にプランターの中に花を植えこみ、デコレーションしたプランターを設置したことで、駅前や商店街が明るくなりました。
東京都立田園調布特別支援学校「落葉でつながる人と街アクションプラン」
『みど*リンク』アクション認定証授与式に地域住民、保護者、行政の方々などをお呼びしたことにより、活動の取り組みをより幅広く知っていただくきっかけになりました。
渋谷Flowerプロジェクト(シブハナ)「渋谷Flowerプロジェクト~ここから始まる新しいカタチ~」
支援により、お揃いのビブスで活動することで参加メンバーが一体感を持って取り組めるとともに、街行く人にも、活動を効果的にアピールできるようになりました。
チーム世田谷駅前花壇『「ボロ市」へ ようこそ。「世田谷駅前花壇」でおもてなし』
冬の風物詩として知られる「ボロ市」の玄関である世田谷駅隣接の空き地に花壇が再生され、街が明るく華やかになりました。
アスク宮前平えきまえ保育園「お花いっぱい笑顔いっぱい駅前フェンス」
保護者と子どもが一緒に自然に触れることができました。花で飾られたフェンスをみて「お花がいっぱいになったね!」と声をいただくなど、地域とのふれあいのきっかけになりました。
15:20
テーマ「足もとからみんなですすめる 地球人のまちづくり」
「どこに暮らす?誰と暮らす?」
人が地球で生きていく上で、一番深い問いかけではないでしょうか。
私は「みど*リンク」アクションの活動は、この問いと絡むと考えています。みどりをご縁に、例えば、花壇の手入れや動植物などを大切にする活動をとおして、実は「誰とどこに暮らす」という問いが、閉塞的なものではなく、「みんなと街で」暮らすという答えにつながります。みどりのご縁で、地域のにぎわいや良好なコミュニティが進む。これは『みど*リンク』アクションの大事な側面だと思います。
ここからは、『みど*リンク』アクションのもうひとつの側面である「環境負荷の軽減」について踏み込んで考えてみたいと思います。「生物多様性の危機」「温暖化の危機」という課題に、『みど*リンク』アクションがどういうつながりを持てるかというお話です。
生物多様性の危機に対して環境省が掲げていることに、「生物多様性の主流化」があります。「生物多様性の自分事化」といってもいいでしょう。私たちの暮らしの足元から、野生動植物のにぎわいを励ましていく、そういう暮らしを市民、企業、学校でしようという考え方ですが、なかなかうまく進んでいません。「みど*リンク」アクションの取り組みであれば、これをうまく進められると私は考えています。
クロスジギンヤンマ(トンボ)の生息地支援の話をしましょう。昔はクロスジギンヤンマが生きる小さな池があちこちにありました。ところが街が広がり、池がなくなり、生息地が減少しています。でもご心配なく。解決方法があります。街や学校、工場の中に小さな池をつくってください。そして周りに少し背の低い木を植えてください。池にはメダカをいっぱい飼っておきましょう。するとそこにクロスジギンヤンマがやって来る。やってきて、卵を産んでヤゴが育って、成虫になります。こうしたちょっとした取り組みが、街の中で行き場所を失いつつある生き物たちの生態系を支えることになります。
もうひとつ、地球温暖化という問題があります。「IPCC」という国際的な組織が、第五次統合レポートの中で、温暖化は止まっておらず、全力で炭酸ガスを減らしていっても、おそらく温度上昇や豪雨の激化、海面上昇は起こるだろうという予測を出しました。これを受けて、日本の政府でも、今後大雨が降ったときなどに備えて防水・防災の「適応策」に積極的に取り組むことを決定しています。
現在増えている豪雨に対して、国交省では全力で対策を打ってきました。ですが、さらにこれからどんどん豪雨が激しくなるという予測が出たわけです。これ以上の対応をどうするのか。国土交通省も、各自治体も、各河川管理者も今真剣に悩んでいます。
街の中の小さな谷でしっかりとみどりを管理する、それができるかできないかで今後の温暖化適応策が大きく変わってきます。ここで慶應義塾大学の例をご紹介しましょう。日吉キャンパスには、昔、木々が伸び、つるにからまり土砂災害を起こしそうな「一の谷」という場所があり、実際に大崩壊を30年前に起こしました。そのあと、もう二度と起こさないように、我々は保水力の高い森を育て、池をつくって、自然を再生しました。土砂災害対応と同時にみどりを増やし、池ではメダカとトンボを育てています。
この小さな谷でみどりのお世話をするという活動は、実は温暖化適応策へのひとつの貢献になります。『みど*リンク』アクションの活動においても、これから5年、10年先を視野に入れた取り組みを展開することで、温暖化適応策に貢献できるのではないかと私は考えています。
「足元の流域から、いのちの星を考え、(私たちの環境を)暮らしながら直す」。こういったことが、この先50年、100年地球に生きて、産業文明の発達した都市で暮らす市民の大きな課題になってくると私は考えています。
『みど*リンク』アクションにおけるみなさまの今現在の素晴らしい貢献に加えて、もう少し努力を加えると、生物多様性への貢献はたやすいと私は思います。さらにもう少し努力を加えると、実はそれが、温暖化豪雨対応にまで広がっていきます。そういう展開になれば素晴らしいと私は思います。ありがとうございました。(以上、要約)
16:05
活動報告を行った2014年度16グループの中で、投票数が多かった上位2グループに、表彰状と副賞が贈られました。
【アワード受賞グループ】東京都立田園調布特別支援学校
【受賞理由】生徒の自主性を引き出しながら、環境循環の仕組みを巧みに取り込み、地域コミュニティの活性化へとつなげている点が評価されました。
東京都立田園調布特別支援学校 指導教諭 柴田一様より 喜びの言葉
「私たちは、地域の方が提供してくれた落ち葉で、生徒たちが野菜をつくり、地域にその野菜を還元するという取り組みをしています。この活動をとおして、生徒たちが地域に認められ、地域社会につながっていく。そうして高い自己肯定感を得られることが何よりも大切だと考えています。
「東京都立田園調布特別支援学校」林先生(左)柴田先生(右)
また、地域としても、落ち葉がゴミにならずに腐葉土(肥料)として活用され、ゴミの減量や食の安全につながっていく。小さいことではありますが、こういった活動が街に広がり、さらに浸透していくことが大事だと考えています。何よりも生徒たちの活動が高く評価されたということがうれしいです。ありがとうございました」
【準アワード受賞グループ】慶応義塾大学・日吉丸の会
【受賞理由】慶應義塾大学名誉教授岸先生の指導を仰ぎながら理念や取り組み内容をしっかりと考え、長期的な目標を掲げ活動している点が評価されました。
慶応義塾大学・日吉丸の会 代表 小宮繁様より 喜びの言葉
「思いもかけない受賞でした。非常にうれしく思います。今回の『みど*リンク』アクションの支援により、地域のみなさんだけでなく、企業の方々と本格的な活動ができたのがひとつの成果だと思います。
「慶応義塾大学・日吉丸の会」小宮さん(中央)伊藤さん(右)角田さん(左)
横浜市港北区さん、NPO法人鶴見川流域ネットワークさん、そして東急電鉄さん、いずれも働いている方々の団体です。環境を守ることに関係する仕事が地域にあることを知るというのも重要だなと思いました。そういう方々とさらに活動を深めていければと思います。ありがとうございました」
16:10
2015年度に支援させていただく7グループが紹介されました。
16:25
東急カード㈱ 営業部 桑野課長より「乗ってタッチ みど*リンク」についてご説明
「東急電鉄では、東急の電車やバスにPASMOやSuicaで乗っていただき、東急グループの施設の店頭などに設置されている専用端末にタッチしていただくことで、TOKYUポイントが一日10ポイント貯まる『乗ってタッチTOKYUポイント』というサービスを実施しています。
この「乗ってタッチTOKYUポイント」と、『みど*リンク』アクションの活動をつなげたのが「乗ってタッチ みど*リンク」の取り組みです。タッチ端末にタッチしていただくと、お客さまにはTOKYUポイントがプレゼントされるのですが、一方で『みど*リンク』アクションの活動資金として、東急電鉄が5円相当を拠出するという仕組みになっています。
お客さまご自身もTOKYUポイントを貯めて少し幸せな気分になっていただき、かつ一回のタッチにつき『みど*リンク』アクションの活動資金が拠出されるということで、多くのお客さまに共感していただいております。2014年度の実績としては、約95万タッチ、合計480万円弱が活動資金として拠出されました。
この仕掛けを沿線の方々にさらに知っていただくことで、『みど*リンク』アクションの活動もより活性化すると考えております。みなさまご自身はもちろん、まわりにいるお友達の方々にもぜひお知らせいただき、このサービスをご利用いただければと思います」
16:30
環境省のご要職のご挨拶に続き、㈱環境ビジネスエージェンシー代表取締役の鈴木敦子様より、日本の里山再生事業「日本の美しいSATOYAMAを見てもらおう!」について、活動内容をプレゼンいただきました。
16:35
2012年度からご支援をさせていただき、今年度の支援グループを含め、42グループと広がりました。
16:40
カンファレンス終了後、慶應義塾大学協生館のイベントホールにて、立食パーティ形式の懇親会が開催され、活発な意見交換の場になりました。
みなさんにカンファレンスの感想をお聞きすると、「自分たちの活動とは全然違うことを行っているグループも多く、とても参考になりました」という声や、「それぞれの地域でそれぞれ独自に工夫されていて、我々ももっとできることがあるなと刺激を受けました」といった、他グループの活動を参考にしたいという声も多くありました。
懇親会の後半では、2015年度支援グループの方々から意気込みの発表もあり、大変な盛り上がりとなりました。今後の活動への期待が大いに高まる中、カンファレンスは無事終了しました。
18:30
みなさま大変お疲れ様でした。
今後も、皆様が取り組んでいるみどりの活動を『みど*リンク』アクションが応援してまいります。