2016年4月23日、二子玉川ライズ内にある「東京都市大学 二子玉川夢キャンパス」において、『みど*リンク』アクションの支援グループが一堂に会する、第4回『みど*リンク』カンファレンスが開催されました。
2015年度支援グループによる活動報告の後、二子玉川ライズ・第2期事業の緑化計画を担当された(株)ランドスケープ・プラス代表取締役の平賀氏に、「二子玉川の生物多様性について」をテーマにご講演いただきました。講演終了後には、2016年度の支援グループの紹介と、東京都市大学の学生による、自由が丘駅周辺を対象にした緑化計画の発表が行われました。
カンファレンス終了後、平賀氏の案内により二子玉川ライズの屋上庭園を見学。続いて、二子玉川エクセルホテル東急の宴会場に場所を移し、懇親会が開催されました。懇親会では、各支援グループ代表の投票によって選ばれた2015年度『みど*リンク』アワードを発表。アワードは、日吉駅西側にある松の川緑道において、貴重な植物や生物の維持・保全に携わる「松の川遊歩道(緑道)の会」が受賞しました。
【開催日時】 2016年4月23日(土) 14:30~18:30
【会場】 東京都市大学・二子玉川夢キャンパス/二子玉川エクセルホテル東急・宴会場
14:30
東急電鉄 都市創造本部 開発事業部 事業計画部 都市政策担当 白鳥課長の挨拶により、第4回『みど*リンク』カンファレンスが開会しました。
開会の挨拶
14:35
2015年度に支援を受けた7グループが、それぞれ5分ずつ活動内容を報告。発表のあと、2015年度『みど*リンク』アワードの投票が行われました。
松の川遊歩道(緑道)の会
パセリの苗などを植えたプランターを地域の方に配り、キアゲハの生育環境を地域に拡散。広場にビオトープを作成し絶滅危惧種のホトケドジョウを放流するなど、日吉駅周辺の生物多様性向上に貢献することができました。
江田駅周辺商店会
殺風景だった江田駅周辺に花を植えることで、駅周辺地域を明るくし、環境意識を高めることができました。地域の学校や企業が共に活動に参加することにより、地域コミュニティの輪を広げ、絆を深めることができました。
目黒天空庭園栽培ガーデニングクラブ
大橋ジャンクションの屋上庭園で野菜とぶどうを栽培。山梨のワイナリーと協力して、ワイン作りを実施するほか、有機栽培に使う堆肥を落ち葉から手作りする取り組みなどを通し、地域の方々の交流・憩いの場を創出しました。
駒澤大学 ECO・環境保護団体Green Grow
住宅街にある空き地を世田谷区から借り、まちづくりの発信地に。地域の子どもたちを招いての自然観察会や地域交流会、花の配布会を通して、地域交流の場を提供するとともに、生物多様性に貢献することができました。
東調布中スマイルサポート
東調布中学校の生徒と地域の方が協力して、学校のフェンスのバラを増やしたり、季節の花を楽しめる環境を整えたりしました。2014年度『みど*リンク』アワードを受賞した田園調布特別支援学校様にご指導いただき、落ち葉腐葉土を作る活動を開始しました。
下丸子公園 愛花会
下丸子公園の花壇の範囲を広げ、地域の子ども達や親子で花を育てる「子ども花壇」を新たに作ることができました。冬場もハボタン、クリスマスローズ、パンジーなど多くの花を咲かせることで、地元の方に憩いの場を提供しました。
あおばく・川を楽しむ会
鶴見川最上流の河川敷で、自然植生生物(オギ、ススキ、ハナウド)の維持・保全活動を長年にわたり実施。メンバーの手で行っていた草刈りや剪定に関し、支援品の発電機と電動トリマーを使うことで、作業を効率化できました。
15:20
テーマ「二子玉川の生物多様性について」
今日は「二子玉川の生物多様性について」ということで、私が設計のはじめから完成まで関わった二子玉川ライズ・第2期事業のお話しをさせていただき、これからの環境について一緒に考えていけばれと考えています。
まず私の事務所「ランドスケープ・プラス」ですが、どういう意味を込めているかご説明しましょう。「ランドスケープ」というのは、産業革命の後に生まれた学問です。産業革命による都市の環境汚染を、自然の力で解決しようというのが元々の思想です。そうした思想をベースに、今我々が生きている地球の問題解決の一助になろうというのが、私どもが行っていることです。
私はこれを「社会的共通資本」を作っていくことだと考えています。社会的共通資本とは、経済学者の宇沢弘文(うざわ・ひろふみ)さんが提唱した言葉で、みなさんの活動や地域の取り組みも、やはり皆で社会的資本を作っていこうという活動のひとつだと思います。そして、乗降客数の多い二子玉川駅の近くで、社会的共通資本について何ができるのかを、東急電鉄の方々と一緒に考えたのが、二子玉川ライズ・第2期事業における緑化計画でした。
二子玉川には多摩川という、東京にとって大事な母なる川が流れており、背後には国分寺崖線が残っています。この環境は、国家戦略の中でも非常に重要な自然の資本だと謳われています。
また周辺には、東京23区内唯一の渓谷である等々力渓谷があります。二子玉川ライズ・第2期事業では、こうした地形構造を、低層部の建築の断面構造に反映し、そこに等々力渓谷や河岸段丘に見られるような植生の構造を、あるいは水循環を展開していくことで、この場所ならではの快適性や自然の循環を再現することになりました。
ただ、みなさまの報告にもありましたが、みどりを管理するのは、お金や手間、人手がものすごくかかります。そういったものをどういうふうに持続可能な展開にしていくのか、ということも当然議論の中に出てくるわけです。
そこで我々は、0.7ヘクタールほどある屋上庭園を、「地域の生命をつなぐエコミュージアム」として構築することを掲げました。地域の自然環境や自然構造を再現して、生態系をつなぐ地域の生命基盤を作ろうということです。
今の地球人が解決しないといけない問題は2つあるといわれています。ひとつが地球温暖化の問題。これはどちらかというとエネルギーの問題で、CO2の排出量をどうやって減らしていこうかということが議論の中心にあります。もうひとつが生物多様性の問題で、これは今日みなさまがお話になられた、みどりのネットワークや生態系の保存を地球規模で行っていかないと、近未来、大変なことになるという話で、いま国を超えていろいろなルールを作ろうとしています。おそらく次代を生きる子どもたちは、この2つを同時に解く能力を持っていないといけません。みどりや自然科学についての知識と、環境工学の知識の両方が求められる時代がやってきているのですね。
屋上庭園では、太陽光発電によって生み出したエネルギーで、水の循環を行うなど、ただ単にきれいなみどりを植えるだけではなくて、それがどういうエネルギーで作られているか、動いているかも学べるような、低炭素型社会のモデルを体現することを目標にしました。
また、多摩川の絶滅危惧種であるカワラノギクをこの場所で保全しています。このような取り組みは、商業施設の屋上にはふさわしくないのかもしれません。ですが、新しい試みとして、東急電鉄さんの強いご要望もあり、地域で自然を守りつないでいくことをテーマに、こういった活動を継続していただいています。
この後、屋上庭園をご覧いただきますが、その際ご質問などがありましたら、ぜひお気軽にお声かけください。本日はどうもありがとうございました。(以上、要約)
16:05
2016年度支援9グループが紹介されました。
16:15
東急カード株式会社 カード営業部 植竹様より「乗ってタッチ みど*リンク」についてご説明
「2013年2月より、『乗ってタッチTOKYUポイント』というサービスを実施しています。これは、PASMOやSuicaで東急線、東急バスに乗っていただき、沿線の東急グループの商業施設に置いてある専用の端末にタッチすることで、TOKYU POINTが10ポイント貯まる仕組みです。貯めていただいたポイントは、1ポイント1円として、東急グループの商業施設や自由が丘商店街などで、お使いいただけます。商業施設に、自家用車ではなく、電車、バスでご来場いただくことを促進するエコな活動であるとわたしたちは考えております。
『乗ってタッチ みど*リンク』についてですが、こちらは『乗ってタッチTOKYUポイント』と連動しておりまして、PASMOやSuicaで東急線や東急バスに乗っていただき、商業施設の専用端末にタッチすることで、お客様にはTOKYU POINTをご提供。それと同時に、東急電鉄が、『みど*リンク』アクションに、5円を拠出するというものです。お客様に共感いただき、タッチ数が増えれば増えるほど、沿線緑化が進んでいくというわけです。
本活動につきましては、ポスターやチラシなどで広く沿線の皆さまに周知をはかって参りたいと存じます。お客様にも参加意識をもっていただき、一緒に沿線緑化を進展していける仕組みですので、ぜひご協力のほどよろしくお願い申し上げます」
16:20
東京都市大学 都市生活学部 専任講師・末繁先生のゼミ生による、自由が丘の将来像に関する提案が行われました。
16:30
16:35~17:00
懇親会の会場へ移動。途中、(株)ランドスケープ・プラス代表の平賀氏にご説明いただきながら、二子玉川ライズの屋上庭園を見学しました。
17:00
二子玉川エクセルホテル東急にて、立食パーティ形式の懇親会が催されました。各支援グループのみなさんが食事を楽しみながら、活発に意見交換する様子が見受けられました。
17:30~17:40
活動報告を行った2015年度支援7グループの中で、得票数が最も多かったグループに、表彰状と副賞が贈られました。
【アワード受賞グループ】松の川遊歩道(緑道)の会
【理由】キアゲハを中心とする貴重な生物や植物の保全活動、『慶應義塾大学・日吉丸の会』など他グループとの横のつながりをベースにした活動の広がりが高く評価された。
松の川遊歩道(緑道)の会 代表・田辺様、原田様、高嶋様より喜びの言葉
「私たちは30年以上活動を続けてきたわけですが、これまでたくさんの方に関わっていただきました。そうしたみなさまとも喜びを分かち合いたいと思います。本当にありがとうございました」(田辺様)
「昨年は『慶應義塾大学・日吉丸の会』が準アワードを獲得しまして、今年は我々ということで、日吉駅周りで続けての受賞となり、本当にうれしいです。ありがとうございました」(原田様)
「今回作ったビオトープなどをこれから維持・管理していくのは大変ですが、これからも皆で健康に気を付けながら、長く活動を続けていきたいと思います。今後ともどうぞよろしくお願いいたします」(高嶋様)
「松の川遊歩道(緑道)の会」
田辺様(中央)
原田様(左)
高嶋様(右)
18:00~18:10
懇親会の後半では、2016年度支援グループの方々から自己紹介を兼ねたスピーチが行われました。
参加した方々にカンファレンスの感想を聞くと、「いろいろな団体が、それぞれの視点で“みどり”にまつわる活動をしていることがわかり、大きな刺激を受けました」といった声や、「年々盛り上がっていくのがわかってうれしい」といった『みど*リンク』アクションのさらなる活性化を喜ぶコメントをうかがうことができました。今後の活動への期待が高まる中、カンファレンスは無事終了しました。
18:30